いろはにほへと

本の紹介を、備忘録を兼ねて

ノートルダムの鐘

キリエ・エレイソン、主よ哀れみを 劇団四季のノートルダムの鐘をずぅっと見たいと言っていて、去年の8月にようやく叶いました。12月にもう一度観に行くほどドハマりした…。 キャッツはもう3、4回ほど観ているくらい好きなんですが、どっちがいいか聞かれた…

やろか水

『やろか水』瀬川拓男 日本で生まれ育った人なら、「まんが日本昔ばなし」にお世話になった経験がある事は珍しくないはずだ。 もちろん私もその一人だ。 呆れたことに私にはサッパリ記憶がないが、テレビアニメでも放映していたらしい。 じゃあどこで世話に…

鷲は舞い降りた

『鷲は舞い降りた』ジャック・ヒギンズ(菊池光 訳) このところ、スパイに関する話を聞くことが多かったので、せっかくだから以前から気になっていたこの本を手に取ってみた。 これを言うとよく驚かれるけれど、私はたいていの本を結末から読む。 最後に主人…

凍りのくじら

お久しぶり。 夏休み、前半はバイトに明け暮れ後半は海外へ行っていたら、すっかりブログなどなおざりになってしまった。 久しぶりに紹介する作品はこちら。 『凍りのくじら』辻村深月 白く凍った海の中に沈んでいくくじらを見たことがあるだろうか。 最初の…

明日戦争がはじまる

『明日戦争がはじまる』宮尾節子 まいにち 満員電車に乗って 人を人とも 思わなくなった インターネットの 掲示板のカキコミで 心を心とも 思わなくなった 虐待死や 自殺のひんぱつに 命を命と 思わなくなった じゅんび は ばっちりだ 戦争を戦争と 思わなく…

ふしぎをのせたアリエル号

『ふしぎをのせたアリエル号』リチャード・ケネディ(中川千尋 訳) ぬいぐるみの頭に針を突き刺した経験はあるだろうか? 私はある。 この本の主人公エイミイは船長の人形キャプテンとずっと一緒だった。 エイミイが生れた日にキャプテンも生まれた。 エイミ…

失われた本

更新が永久停止してしまいそうなので、ちょっと雑談を。 私の実家には、「お蔵(おくら)」と呼ばれている部屋がある。 正確には部屋でもなくて、中二階というのが正しいだろう。 そこには、いろんなものが眠っている。古い着物や、年代物のお酒、誰も弾かなく…

変身

『変身』フランツ・カフカ(高橋義孝 訳)虫が苦手で、なおかつ想像力がたくましい、というひとは読まない方がいいだろう。世界的に有名な作家の長く読み継がれる名作であっても、向き不向きというものがある。私がしてしまったように、せっかくコンビニで買っ…

オオカミ族の少年

『オオカミ族の少年』ミシェル・ヘイヴァー(さくまゆみこ 訳) クロニクル千古の闇シリーズ 遊びに来た友人が嬉しそうに「これ読んだことある!」と言ってくれたので。 そのうち書くつもりだったし、ちょうど良い機会になった。 物語の舞台は紀元前4000年の森…

ディアスと月の誓約

『ディアスと月の誓約』乾石智子 乾石智子先生の作品との出会いはこの本だった。 それは少しもロマンチックでも衝撃的でもなかったけれど、今でもよく覚えている。 地元のよく行く本屋さんのひとつは、回転寿司の隣にある。その日は家族とお寿司を食べに行っ…

いのちの食べかた

『いのちの食べかた』森達也 ベジタリアンや、ヴィーガンという言葉を聞いたことのない人は少ないだろう。それでも一応解説しておくと、ベジタリアンとは肉や魚を食べない人々、ヴィーガンは肉や魚に加えて卵、乳製品、はちみつも食べない人々のことだ。肉や…

あかねさす

『万葉集の恋うた』清川妙 あかねさす 紫野ゆき 標野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る タイトルは額田王のこのうたから。 以前、古典文学が好きだ、と書いたと思う。私は物語文学だけでなく、和歌も好きで仕方ない。 最初に好きになったうたは何だっただろう。…

松ノ枝の記

『道化師の蝶』円城塔 『道化師の蝶』収録二作品のうち、「松ノ枝の木」の方を 突拍子もない、とでも言おうか。とにかく、この物語は私の理解力の及ぶ場所になかった。なにを言っているんだ、と思い、同じ行を何度も読み直し、それでも全然理解できないまま…

ハンバーガーって何か知ってる?

今日は本を読む時間がまるでなくて、ろくな紹介を書けそうにないので、最近見た動画の紹介をする。 私も最近大学の講義で紹介されて知ったのだが、Youtubeで「ted」と検索すると、様々な人のスピーチ動画を見つけることができる。だいたい、5分から20分くら…

思い出のマーニー

『思い出のマーニー』ジェーン・G・ロビンソン(高見浩 訳) スタジオジブリがマーニーを映画化したとき、流れていたCMの主題歌があまりにも美しくて、これは観に行こうと決めた。(And I cry…のところでは何度聞いても泣き出したくなってしまう) 私は結末のわ…

ハッピーバースデー

『ハッピーバースデー 命輝く瞬間』青木和雄 誕生日に「おめでとう」と言ってもらえない子供がいることを、私はずっと知らなかった。 私がDVに興味を持つ最初のきっかけになったのがこの本だ。最初に読んだのは小学校三年生か四年生だったから、DVという言葉…

悲しみよこんにちは

『悲しみよこんにちは』サガン(河野万里子 訳) ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう。 物語の最初の一文だ。出だしから「あ、この物語は普通じゃないな」と感じる。普通じゃ…

人はなぜ物語を求めるのか

『人はなぜ物語を求めるのか』千野帽子 昨年に読んだ本で、Twitterで感想を呟いていたものをまとめなおす。どちらかというとコラムのほうの感想かもしれない。 この本は作者の連載コラムがもとになっていて、私はコラムを読んで本書の購入を決めた。 コラム…

おちくぼ姫

『おちくぼ姫』 (田辺聖子) 突然だけれど、日本のお姫様たちはかわいい。その意思の弱さはどうなんだ、と思うことも多いけれど、とにかくかわいい。今日はそんなかわいい日本の姫君の一人、おちくぼ姫の話をしようと思う。 昔話の好きな人なら知っているかも…

水に浮かぶ女

今日は趣向を変えて絵の話をしようと思う。私は絵を見るのが好きだ。残念ながら美術的な知識なんてものはなく、ただ美しいと思うだけなのだけれど。誰の絵が好きか、と聞かれると困ってしまうが、ミュシャは好きだ。あとは印象派とかラファエル前派の絵はよ…

禁じられた約束

『禁じられた約束』ロバート・ウェストール(野沢佳織 訳) 私は児童文学が好きだ。なぜか、と聞かれると答えに詰まってしまうけれど、とにかく好きだ。小学生あるいは中学生だった時分から読み続けている作品も多い。そのひとつがこれだ。ロバート・ウェスト…

わたしを離さないで

『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ (土屋政雄 訳) 昨年だったか、作者のカズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞したので、知っている人も多いかと思う。数年前、日本でドラマ化もされていたらしい。(映画版はみたけれど、こちらは観ていない) 命に…

そして祈りをこめるもの

『双頭の蜥蜴』乾石智子 タイトルはセリフから 好きな本はたくさんあるけれど、好きな作者というのは実はあまりいない。 乾石智子先生は、私の数少ない好きな作者の一人で、生まれて初めてファンレターを送った相手でもある。もちろん返事など期待していなか…

会えなくなるから友達じゃなくなるのか

『消えてなくなっても』椰月 美智子 タイトルは登場人物のセリフから。 高校生の時に出会って、夏が来ると読みたくなる。 友情物語じゃない。 これは、愛の話だ。 愚直に、不器用に、自分たちが消えてなくなっても誰かに愛を繋いでいく。 「生きているか死ん…